窃盗事件
■窃盗事件・窃盗罪とは
窃盗事件とは、簡単にいえば、人の財産が盗まれた事件をいいます。刑法上では、「他人の財物を窃取」する行為に窃盗罪が成立します(刑法235条)。
「窃取」とは、他人の占有する財物を、所有者の意思に反して、自己又は第三者の占有下に移転させることをいいます。あくまで、意思に反して財物を奪うことが必要であるため、騙したり脅して財物を渡させた場合などは、窃盗罪ではなく詐欺罪や恐喝罪が成立します。
よく置傘を盗まれることがある人も少なくないと思いますが、それも立派な窃盗にあたります。
そして、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされており、決して軽くありません。
また、窃盗罪は、盗んでいる途中に気付かれた等により財物を手に入れることができなかった場合でも、未遂罪として罰されます(刑法243条)。
くわえて、窃取行為に着手した後に、「財物を取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をした」場合は、強盗犯とされてしまいます(刑法238条)。強盗犯となった場合に、人を負傷または死亡させてしまった場合は、強盗致傷(傷人)罪ないし強盗致死(殺人)罪が成立してしまい(240条)、その法定刑は「死刑又は無期懲役」と非常に重いものとなっています。
そのため、窃盗罪は非常に身近な犯罪ですが、究極的には上記のような非常に重い犯罪に発展してしまう場合がある点に注意が必要です。
■窃盗事件が起こった場合の流れ
おおまかには、以下の流れになります。
①逮捕(現行犯逮捕または通常逮捕)
②検察庁への送致
③勾留(最長20日間)
④起訴(保釈されない限り拘置所に勾留)
⑤裁判
もっとも、窃盗事件では、略式手続により罰金刑が科されることが多いです。
略式手続とは、検察官が、裁判をせずに書類のみの簡易的な審理を求める形で略式起訴をし、それに伴って裁判所による略式命令がなされる手続きのことをいいます。
略式命令では懲役刑を科すことはできないので、検察官が略式起訴をして略式手続が行われることになれば、窃盗罪の場合は、結果は必ず罰金刑となります。
また、被害者との示談を成立させることで、逮捕前であれば刑事事件化を防ぐことができ、起訴前までであれば不起訴処分を獲得することができます。示談の有無は、後述の通り、量刑判断に大きく影響するため、刑事裁判上でも加害者にとって有利な事情として作用します。
■窃盗罪の量刑判断
窃盗事件を起こした場合、そもそも逮捕される割合は3割であり、起訴率はそのうちの約4割、実刑になる割合は約4割となっています。
また、懲役年数は10か月~5年、罰金額は10~30万円が相場です。特に、初犯であったり、数千円程度の商品の万引きの場合は、罰金刑にとどまる可能性が高いです。
窃盗罪の量刑は、被害品の金額等の損害の大きさや、行為の悪質性によって判断されます。例えば、宝石や車などの高額な物を盗んだ場合や、金額が小さくとも何度も窃盗を栗化している場合、計画的または組織的な犯行である場合などには、刑罰が重くなるといえるでしょう。
また、上記の通り、強盗致傷罪などの重大犯罪に発展する可能性もありますし、目的地に侵入する際に鍵やドアなどを壊した場合等は、窃盗罪以外の犯罪も成立することで、より刑罰が重くなるといえます。
そして、示談の有無も量刑判断に大きく影響します。示談がある場合には、懲役刑を科される場合であっても、刑期が軽減されたり、執行猶予となる可能性が高くなります。
くわえて、窃盗罪の場合は、「身元引受人」がいれば、再犯に至る可能性が低いと判断され、刑罰が軽くなる傾向があります。
身元引受人とは、今後の被疑者の行動や生活を指導・監督する人をいい、被疑者に対して強い影響力を有し、かつ、社会的信頼性があることが必要とされます。一般的には、家族を選ぶことが多いですが、会社の上司や友人などを選ぶこともあります。
■窃盗事件に関する時効
刑事事件には、公訴時効という制度があります。公訴時効とは、公訴時効とは、刑事手続上の概念で、犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると公訴が提起できなくなる制度のことです。
窃盗罪の公訴時効は7年となっており、犯行の終了時を起算点とします。
■示談について
上記の通り、窃盗事件を起こしてしまった場合には、被害者との示談を成立させることで、逮捕や起訴されない可能性が高くなり、また、刑事事件に付された場合でも、執行猶予がついたり刑期が短くなる傾向にあります。
示談金の金額については、盗んだ財物の金額~盗んだ財物の金額+20~50万円、または、盗んだ財物の金額の2倍程度が相場となります。
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